たかというと、神を祭る一つの集団、その集団のなかで、ある特定の人物が、――神と人間、つまり、民衆とその民衆が祭っている神との仲介者になる、そういう人物が、常に必要である。神と神を祭る人達の媒介をする人物です。これがお祭の一番根本的な形式です。神とその神を祭る人間の間に、その両者を結びつける一人の人間が選ばれる。即ち人間の祈りを神に伝え、神の思召を人間に伝える役です。そういう人間が選び出される。ですから、そういう人間は神の代りとなり、神様を自分が代表することになり、また同時に人間を代表することにもなる。つまり一人の人間が神と人間との二つの性格を自分の裡にかりに持つという特別な役目なのです。この役目が、その時代によって、或は民族によって、いろいろな形になっておりますが、この場合にはそれは聖職者である。つまり、日本の神道でいえば神主、キリスト教でいえば司祭である。その聖職者、つまり、神に仕え、同時に神の代弁者であるところの聖職者というものは、その仕事の関係、その仕事の性質上、自分は時としては神の心を心とすると同時に、人間の心を以てまた神に対している。これは一人の人間が、神と人間との二つの役を
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