自分でもっているということになるのであって、この形がそもそも俳優というものの仕事を生み出す一番もとの形であると、今日では考えられている。
 そのお祭の中で、神と人間との媒介をする人間というものはどういうことをしたかというと、一般民衆を代表して神に祈りを捧げ、神を祭ると同時に、一般民衆の方に向って神の言葉を伝える――そういうことをしたのです。それが初めは民衆のなかから何か知れない特別の力を持った人間がそういう風に選び出されて来るのですが、やがてそれが一定した職業になって来る。そうすると、ここにまた一層、今日いうところの俳優的な特色というものがましてきます。俳優的な特色というものがどういう風にして増して来るかというと、その聖職者は、ただ単に神の言葉を伝えるだけでなくて、それが如何にも神の言葉であるかの如く、その人間は如何にも神そのものであるかの如き印象を一般の民衆に与えることが非常に大事であります。それが一つです。
 もう一つは、殆どどの宗教もそうでありますけれども、神の傍には悪魔がいる。ある時は悪魔の危害から脱れる為に神に祈る、或はまたある時は、神の怒りにふれて悪魔の手に委ねられる、とい
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