古い社会にどうして起ったかということを考える時に、無論芝居の原始的な古い起りというものは実際にはわからない。いろいろな研究の結果ほぼ推定できる、想像がつくという程度のものですが、しかし、まず、今日まで残っているいろいろな記録だとか、或は学者の研究した資料というようなものを通じて、今日ではほぼ見当がついている。それは、結局人間が芝居といえるようなものを始めたのは、一つの人間の集団生活、――人間が集って生活をしているなかで、その集団生活には常につきものであるところのお祭、そのお祭の行事として行われたものだということが推定される。つまり芝居とお祭というものが切っても切れない関係にあるということです。しかも、このお祭というのはいうまでもなく、宗教的なものです。即ち、人間が神を祭るということは、その集団生活の幸福を祈る、安寧無事を感謝する、或はその集団生活のなかに恐るべき不幸が来ることを惧れて、そういう不幸が来ないように神に祈る、そういう極く原始的な人間の感情の現われなのです。
そういうお祭に行われた行事のなかに、この芝居というものの芽がふいている。それはどういう風にして芝居という形をとり出し
前へ
次へ
全106ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング