らでも、偉い顔をなさい。しかし、その偉い顔の中にも、なお且つ人を反撥させない魅力がなくてはいけません。堂々と、しかも程よく、存分に、スターたるの悦びを満足なさい」
そのためには、やはり、人間としての巧まない魅力がなければ駄目です。ところが、そこまで人間としての修業が出来ている女優が、フランスにありました。このサラ・ベルナァルは、実に世界で芝居が始って以来の大スターであります。
実にスターらしいスターであり、また同時に、自分がスターであることの満足を一生持ち続けていた女優です。そのスターらしさというものは、誠に普通の常識では考えられないくらい見事なものでした。その云うこと、なすことは実に大袈裟、傍若無人である。その辺の若い作家などは、そばへ行くと頭をなでられる。男はすべて、自分の坐っている足下に跪いて御機嫌をとらなければ承知しない、というような傍若無人さであったけれども、そのスター振りのなかに、大女優としての貫禄とその魅力、殊に女性としての輝くばかりの美しさを、絶えず保っていたということが、サラ・ベルナァルをまったく奇蹟的な例外的な存在としたのです。サラ・ベルナァルより才能に於てもま
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