俳優養成と人材発見
岸田國士

 わが国に於ける新劇不振の原因が、俳優に未だその人を得ない所にあるといふ私の意見は、たまたま劇壇一部の批難を生んだやうであるが、これはたしかに、解釈の仕方によつては、不都合な言辞として受け取られるであらう。
 しかし、その事実は、私の筆を以てどう曲げることもできない。
 今日まで新劇のために力を尽して来た人々の功績は、無論世間と共にこれを認めるつもりであるが、新劇をして今日の情勢に立ち至らしめた罪――罪と云つて悪ければ、その責任は、やはり、それらの人々が負ふべきであり、新劇の舞台にこれといふ人材を送り出すことができなかつた一事はなんと云つても、どこかにその原因がひそんでゐるのである。
 誰が悪いといふのではない。さうであることが悪いのである。
 今日まで新劇に志した俳優のうちで、相当才能に富んだ人々があつたに違ひない。それらの人々は、何故に自分達の進むべき道をはつきり教へられなかつたか。何故にあるものは、新劇の舞台から遠ざかつたか。何故にあるものは、自分自身をごまかして来たか。それらの人々の熱意が足らないのか。それもあるだらう。しかし、第一に私は、彼等が
次へ
全5ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング