そのものを指しませんけれども、「文の道」に対して、戦時の用意を意味するものと解せられます。従つて、文武両道は、武士の最高の教養とされるのみならず、武士に非ざるものも、一朝事ある時の覚悟として、「武の道」は少くとも胆力としてこれを練るのが真の日本人でありました。
「書道」「茶道」「華道」、すべて「芸道」のうちにはひりますが、これら「芸道」は、男女ともに、その余裕あるものは、「嗜み」としていくぶんづつは身につけるのが普通でありました。それぞれ専門の師匠があつて、深くその道に入るに従つて、「免許」といふものが授けられます。
いづれも、多くの流派を生みましたが、今日ではやゝその区別が混沌としてゐます。
元来、これらの芸道は、日常生活の儀式化、娯楽化されたものでありますが、特に茶道華道は、有閑階級の社交に利用せられる傾きが多く、その「道」たるの精神から遠ざかつてゐるやうに思はれます。
しかし、その発展の歴史を遡れば、「道」としての神髄を発揮し、日本人の生活の豊かな象徴として、日常起居の規範となつたことをも見逃し得ないのであります。
「茶道」のいはゆる「和敬静寂」の精神の如きは、日本的な個人
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