亦、そこになければならぬと思ひますが、それといふのも、ひとつには、精神的な面で、農村には、わが国の国風《くにぶり》なるものがしつかり植ゑつけられ、日本の「家」の伝統が比較的完全に保たれてゐるからです。
かゝる「家」の伝統は、郷土の伝統と結びつき、郷土愛は祖国愛への発展過程を示すものであります。それゆゑ、日本人の愛国心は、祖先崇拝の念を経とし、勤皇の志を緯とする、国土への献身となるのであります。
[#7字下げ]七[#「七」は中見出し]
「献身」と云へば、「家」を中心としての営みのなかに、最も日本的と云はれる「献身」のひとつの姿がみられます。
それは、母として、妻としての「女性」であります。
「日本の母」といふ言葉が近頃使はれてゐますが、これは世界に類を見ない「母」としての日本女性の偉大さを讃へたものでありませう。これはもう普通に云ふ「母性愛」などを指すのではなく、一方、本能的と云へば云へるかも知れませんが、それ以上に、「家」の精神のひたむきな実践であり、多くは無意識ながら、国の宝への命がけの奉仕とでも云ひ得る、崇高な悲願なのであります。
日本の家庭は子供の天国だなどと、外国人は
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