文化の向上といふことを考へた場合に、一国の富の程度が低いといふことは必ずしも物質的に文化水準が低いといふばかりでなく、富をふやす能力がないといふ意味に於て、何処かに精神的な貧しさがありはしないかと思ふのであります。人が多い割に生産能力が低い。例へばイギリスの場合を考へて見ても、植民地が多いといふ有利な条件はあるけれども、その上、工業の発達によつて経済力を確保してゐる。海外に物資を求めるといふことは、南米にしても支那大陸にしても、平和裡にこれができなければならない。若しそれに成功しないとしたら、まだ国民の総力を発揮したことにならないのであります。日本が貧乏だといふことは、われわれにとつて宿命的なものゝやうに考へられてゐましたが、もつと精神的な工夫努力を払へば、当然、必要なだけ国を富ますといふことが可能なわけであります。
日本がいつまでも貧乏であるといふ原因の一つとして、濫費癖といふことが考へられます。例へば今、米が不足だといひますが、日本人はどうも米を食ひすぎるやうです。漬物がうまいからもういつぱい、お茶づけでもういつぱい、炊きたての御飯だからもういつぱいといふ風に、満腹感を感じ
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