せん。それからまた、仕事を含めた日常生活をなるだけ有意義に送らなければなりません。いひかへれば、衣食住を通じ、肉体的にも精神的にも無駄のない、健康な、そして同時に趣味のいゝ暮し方をしなければなりません。人と接するにも、常に気持よく接するといふのが、お互の生活を明るくすることであります。
日本人がその日本人らしさによつて、お互に心を許し合ひ、共に楽しむことのできるやうに、お互はせいぜい自分の「人間」を磨き鍛へなければなりません。
日本人らしさとは、私の考へでは、日本精神をほんたうに身につけてゐるといふことで、すぐ興奮したり、人前でえらさうなことを云つたりすることではなく、昔からわれわれの祖先がそれによつて「人として」の値打を示した「ゆかしさ」と「凜々しさ」であります。
当節、いろいろな人が、いろいろな教へを説いてゐますが、私はなにもむづかしいことは云はなくてもいゝ、日本人は、男も女も、ひとしく、日本人として「ゆかしく」「凜々しく」あれとだけ申したいのであります。これこそ、わが日本人の真の矜りであり、われら臣民として大御心にそふ誠のしるしであると信じます。
日本人の濫費癖
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