ことはできません。やはり子供の時分から、家庭で相当の訓練を受けることが絶対に必要なのであります。いひ換へれば、生活の技術といふものは、誰よりも親から子に伝へられるものであると云へませう。そこには伝統の生きた力が働くのでありまして、それでこそ生活を通して、国民の文化の水準といふものが推し計られるのであります。
「生活」について
今日ほど「生活」といふ問題が世間一般の注意をひいてゐる時代はない。なるほど、生活改善、或は生活合理化といふことは随分久しい以前から一部の人々の間に叫ばれてゐたけれども、ほんたうに、国民自体の欲求として、また国家の総力を発揮するといふ建前から、生活の全面に亘つて、新しい体制を整へようといふ機運は、まさに大政翼賛の精神からほとばしり出たものであつて、私は、新日本の気高い力強いすがたが、国民自らの決意と精進によつて築かれる日が来たことを天に感謝したいと思ふものである。
「生活」とは云ふまでもなく、「生きること」であつて、決して、「食ふこと」のみではないのである。「生きる」とは先づ日本人として生れたことの矜りであり、祖国のために役立ち、命を捧げるところの光
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