る事を禁止して居る地方もあります。之はもう現在に於ては当然廃めなければならん事だと思ひます。之は最初日本の劇を外国の方が見て非常に驚くことであります。併し之は日本許りでなく、例の仏蘭西ではシエークスピヤの芝居が始めて上演された時に、仏蘭西人は吃驚りしたのであります。仏蘭西では人が殺されたり喧嘩をしたりする場合は、舞台の上に出さないのが古典劇の作法であります。シエークスピヤがさう云ふ事を無視して盛に殺伐なことを舞台の上に取入れましたから、当時の仏蘭西人は舞台の上でさう云ふものが演じられると、見物席で女の見物などが気絶したと云ふ話が残つて居ります。若し日本の芝居を見たら当時の仏蘭西人は一人も生き残つてゐなかつたでせう。それから責場ですが之は一種の拷問でありますけれども、必ずしも道具を使つて責める許りではない。所謂理屈詰めで責めると云ふのもありますし、或は情に搦んで責める。詰り義理と人情の板挟にして対手をぎゆう/\責めます。さう云ふ場合の歌舞伎の台詞を真似て「さあどうぢや/\」と云ふやうな言葉を普通冗談に使ひます。之はこの責場の一つの台詞であります。それから黙んまり。此黙んまりと云ふのは黙つ
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