し、それを見せ場とするのが特色です。それを大体九つ許り挙げる事が出来ます。この歌舞伎独特の見せ場と云ふものは今日迄三百年の長い間、其の表現、俳優の演伎の上からいつても、其の俳優の扮装の上からいつても非常に工夫され洗練されたもので、さう云ふ部分だけ見ると云ふのが歌舞伎通の見方であります。其外の場面は弁当を食べたり、酒を飲んだりして見る。其の見なければならない部分とは九つの部分が其の代表的なものであります。先づ濡場と云ふものであります、濡場と云ふのは詰り恋愛の場面であります。男女の情を写したものでありまして、エロチツクなものを含みます。第二は殺場と責場との二つでありまして、之は読んで字の如く殺場は人殺しの場面、責場と云ふのは人を責めてぎゆう/\言はせる場面です。殺場と云ふのは以前には可なり極端な人殺しの場面を細かく演じて惨酷な印象を与へたのであります。俳優が血の出し方を非常に工夫をして斬られた所から血が出る、其の出方を成るべくほんとうらしく見せるなどといふ手品のやうなことをやりました。併し今日では一般民衆に悪影響があるといふ見地から殆ど形式的なものになつてゐます。地方に依つては全く血を見せ
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