のがあります。之は勧進帳が代表的のものであります。それから歌舞伎劇の為に書き下された脚本が其他に沢山あります。此歌舞伎劇の為に書き下されたテキストを更に色々な種類に分けることが出来ます。大体それを分けますと三つになりますが、先づ時代もの、お家もの、それから世話ものと三つに分けます、時代ものと云ふのは源平時代のもので之は王朝ものとも言ひます。日本の封建政治が確立する前の時代です。それからお家ものと云ふのは封建時代の所謂大名のお家騒動を取扱つたものであります。言葉は一寸難しい言葉でありますが、之は後で説明致します。其の次は世話もので所謂市井の民衆の生活から取材したもの。封建時代でありますから、所謂町人の生活であります。今日の言葉で云ふと新興ブルジヨアジーの社会の愛慾、それから義理人情の葛藤、一般の市民の生活の中に起るさう云ふ様な事件を取扱つたのが世話もので、一種の社会劇乃至風俗劇と云ふことが出来ます。それから世話ものは更に古いものと新らしいものとに分ける。詰り近松門左衛門を代表とする所の作者、其の時代の世話ものと、それから矢張り歌舞伎の優れた作者で鶴屋南北、それから黙阿弥の世話ものとがあり
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