独断三幅対
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)動性《でなみすむ》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)めい/\の表現
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二 めい/\の表現
傑れた戯曲が出ない。新しい俳優が出ない。適当な劇場がない。日本現代劇の不振を嘆ずるものゝきまり文句である。
日本人の現代生活には、最も「戯曲的雰囲気」が欠けてゐる。このことに誰か気がついてゐるか。
かういふと、いろいろな劇的事件を呼び起して、そんなことはないといふに違ひない。
僕が、こゝで「戯曲的雰囲気」と云ふのは、実生活が「めいめいの表現」によつて形造られ、彩られ、そこから、「生命の韻律的な響き」が伝へられることを指すのである。
ものゝ考へ方、感じ方、従つてその発表し方に、めいめいの特色があり、工夫があり、命があり、而も、その各が統一と調和とを保つてゐるといふことである。
「御座なり」と「口上」と「紋切型」が、実生活の一部からでも排除された時に、そこに「戯曲的雰囲気」が生じるのである。
劇作家も俳優も、言葉、動作、表情の韻律的魅力に鈍感で
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