れてるんですつて……。ところが、うんと騒がしといて、そのうちの一人を、誰も知らないうちに、ちやんと手なづけてるんですつて、三年前から……。そりや、わからないやうにうまいんですつてさ。相手は五つとか年下なんですけどね、学校にゐる時は、まるで子供扱ひにして、お使ひまでさせるんですつて……。
一寿  (益々顔を火鉢に近づけ、やたらに灰を吹き上げる)あちいツ!(顰めた顔で、らくをみあげ)おい、頼むから帰つてくれ。
らく  はい、はい、ぢや、御用がなければ、あたくしは帰ります。
一寿  教へた通りの挨拶をして行け。
らく  (ぎごちなく、一寿の額に接吻する)

[#ここから5字下げ]
彼女が出て行くと、一寿は、洋服に着かへはじめる。最初の場で唄つたのと同じ節の歌を口吟む。大きく咳払ひをする。嚏めをする。手で鼻を拭く。
カラの釦をはめようとしてゐる時、扉をノツクする音。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一寿  アントレエ! おはいりイ!

[#ここから5字下げ]
悦子が、肩掛に顔を埋めてはいつて来る。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折
前へ 次へ
全70ページ中53ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング