える日でしたかね。ちつとも気がつかなかつた。
一寿  毎月の第三日曜つてこと覚えといてくれ。愛子の亭主がゴルフをやりに行く日だ。今日はこれで風もなし、絶好のゴルフ日和だな。(クラブを振る真似をする)
らく  あなた、やつたことあるんですか。ゴルフとかつて……。
一寿  (照れて)ない。

[#ここから5字下げ]
この時、扉をノツクする音。
一寿、慌てて、扉を細目に開ける。
「お電話です、横浜から」といふ声。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一寿  ありがたう。(らくに)ぢや、今日はもう帰るか?
らく  しかたがないでせう。(これも起ち上つて、一緒に出かけるが、思ひ出したやうに)また序に、洗濯を持つて行きますよ。

[#ここから5字下げ]
彼女は、戸棚から、汚れたシヤツ、猿股、ハンケチなどを取り出し、それを新聞紙に包む。脱ぎ棄てた洋服を壁に掛ける。ポケツトの中のものを出してみる。銀貨がチヨツキのカクシからこぼれる。その一つ二つを、手早く帯の間へ押し込む。
一寿が、寒さうにはいつて来る。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返し
前へ 次へ
全70ページ中51ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング