じめる。茶が来る。音を立てて啜る。日が落ちかける。表に自動車の止る音。
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一寿 やつて来たな。(間もなく呼鈴が鳴る)よし、よし、おれが出る。いや、お前出ろ。丁寧にな。
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らくが玄関に出る。その間、一寿はまた夕刊を取上げる。落ちつくためである。そこへ、らくが名刺を持つてくる。
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一寿 (さも今思ひ出したやうに)おお、さうか。さあ、さあ、こつちへお通しして……。(扉のところまで出迎へながら)いよう、これはこれは……。すぐわかつたかね。
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客は、これも元外務省書記生で、今日は輸入商として相当産をなしたと伝へられる神谷則武(五十二歳)である。
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神谷 わかるにはわかつたが、訪問には悪い時刻になつたな。いや、実は、今夜ね、ある男に会ふことになつてるんだが、その前に、是非ちよつと君に話しときたいことがあつてね。
一寿 まあ、ゆつく
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