か知らんが、当人同士の約束だけでは、正式の約束とは云へん。第一、親の僕が、与り知らんといふ法はないぢやないか。
田所  あなたは、一切干渉をなさらない方針ぢやなかつたんですか。
一寿  今はさうだ。しかし、娘がそんな約束ぐらゐに縛られて、身動きができん羽目に落ちてゐるなら、吾輩は、断じて、約束なるものを取消させる。こりや当り前だらう。
田所  今ここで、何を云つても無駄なやうですから、愛子さんにお目にかかれる機会を待ちませう。僕は、話さへわかればいいんです。決して、男らしくない真似はしないつもりです。ただ、いくら世間を識らないお嬢さんでも、自分の行為に責任をもてない筈はありません。相手の面目を潰さないぐらゐのことは心得てゐて欲しい。過去は過去として認めた上で、現在の立場を明かにする方法は、いくらでもあると思ひます。
一寿  過去と云はれるが、それも序に聞いておかう。いつたい二人の関係といふのは、どの程度まで進んでゐたんですか?
田所  それを、はつきり申上げるためには、愛子さんの同意を得なければならないでせう。かまひませんか?
一寿  そいつはかまはんと思ふが……いや、待ち給へ。君にそ
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