い。僕の前へ立たせてごらんなさい。すぐにお察しがつくと思ひますから。

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一寿は、茫然として一つ時相手の顔を見つめてゐる。が、やがて、起ち上つて、奥にはいりかける。しかし、そのまま、思ひ返して座に戻る。
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一寿  とにかく、いづれ僕から愛子に話してみよう。一旦、君は帰り給へ。さういふわけなら、この間題は僕が預つた。
田所  それはかまひませんが、近いうち、一度愛子さんに会はせていただけるでせうか。
一寿  その必要があればね。双方のために会はん方がいいといふことになれば、つまり、必要がないわけだ。
田所  いいえ、それはあなたの方の御都合できまるわけでせう。僕の方は、どうあつても、愛子さんの口から、一言、はつきりした御返事を聞きたいんです。
一寿  「否《ノー》」といふ返事なら聞くに及ぶまい。
田所  ところが、ただ「否《ノー》」では、僕が承知すまいとおつしやつて下さい。
一寿  承知せんといふのはどういふ意味だね。
田所  満足できないといふ意味です。
一寿  そりや無理だ。どんな約束をした
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