し、近いうちにまた出直して来ませう。ただ、僕が来たことについて、何か誤解をされてゐては困るんです。会ひたくないと云はれるんなら、たつてとは云ひませんが、さうなると、僕の方でもその理由を伺つておきたい気がします。
一寿 待つてくれ給へ。どうもよく腑に落ちんが、君の言葉の調子でみると、愛子は君の意志を知つてゐて、わざと顔を見せたがらんのだといふやうに聞えるが、それなら、君も返事を聞く必要はないんぢやないのかね?
田所 返事よりも、理由です、僕が聞きたいのは……。
一寿 なんの理由……。
田所 返事のできない理由です。
一寿 返事ができるかできんか、まだ訊ねてもみないぢやないか。
田所 わからないかなあ。さつき云つたでせう。初郎君への返事は、まるで返事になつてゐません。
一寿 或は、それが返事の代りかも知れんな。
田所 さうおつしやるのは、あなたがまだ、肝腎な点を御存じないからです。僕たちの間柄を、普通なもんだと思つてらつしやるからです。
一寿 穏かならんことを云ふぢやないか。男女の間柄を、普通でないといふと、どういふことになるね。
田所 愛子さんを此処へ呼んでごらんなさ
前へ
次へ
全70ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング