ニイの手摺にのせながら)それがどうして変だい。お前こそ、子供らしくないよ、余計な事にこせこせ気がついて……肝腎の勉強はお留守でせう。(間)今日はもう遅いから、お茶はこの次のことにして、その代り、ぽつちりだけど、お小遣をあげよう。(帯の間から蟇口を出し、五十銭銀貨を一つ渡す)
桃枝 いいの、貰つて?
らく 遠慮する柄かね。でも、一人で活動なんかへはいるならあげませんよ。
桃枝 ふふ……ぢや、あたし……。
らく あ、ちよつとお待ち……ことによつたら、今日は、お嬢さんたちお帰りがおそいかも知れないから、お前あたしと一緒にごはんたべてかない?
桃枝 ええ、ご馳走があれば……なんて……。
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その時、扉の入口へ、沢一寿の姿が現はれる。
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一寿 ほう、来とるな。
らく おお、びつくりした。何時お帰りでしたの? 玄関は開きましたんですか。(娘を追ひ出すやうにする)
一寿 もうぢき、お客さんがみえるから、何時かの葡萄酒を出してな。それから、飯はどうなるかわからんが、ともかくスキ焼ぐらゐできるや
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