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らく これでよろしいでせうか。
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愛子は引つたくるやうにそれを受け取つて、すかしてみる。
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愛子 駄目よ、これ、二十四ワツトぢやないの? 四十でなきや、暗くつて、字も読めないわ。
一寿 (娘のやや粗雑な言葉の調子を聞きとがめ、しばらく、ぢつと眼をつぶつてゐるが、やがて)おい愛子、それから悦子、お前たちに云つておくがね……。(長い間)この女《ひと》は、もう雇人ぢやないんだよ。
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この突然の宣言に、女たち三人は、それぞれの驚き方で、すくむやうに後退りをしながら、互に妙な会釈を交す。
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一寿 お前たちに「お母さん」と呼ばせるかどうか、そこまではなんとも云へない。お前たちの意見もあることだらう。ただ、かういふことは、内証にしておくべきでないと、今ふと考へついたんだ。お前たち二人は、なんにも心配しないで、伸び伸びと、自分の生活を築いて行きなさい。こ
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