、少しからかつてやつてくれ。だが、今の話は内証だぜ。

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らくが現はれる。
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らく  お二人とも御一緒にお帰りになりました。(更に声を高くして)あのお嬢様……。
一寿  わかつとる。神谷さんがいらしつてるからつて、さう云ひなさい。

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悦子愛子の姉妹がはいつて来る。姉は和服、妹は洋装である。一見地味な扮りをした姉は、何処となく朗らかで、妹はパツとした服装のわりに、冷たく取澄してゐる。
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一寿  どうした、早いぢやないか、今日は……?
悦子  虫が知らせたのよ、ねえ、愛ちやん……。
愛子  (神谷に)先達ては……。
神谷  やあ、かうして、お二人を並べて見るのは随分久し振りだな……。
一寿  初郎の葬式の時、寺へ来てくれた、あの時が最後かね。
神谷  この春ね。さうだ。悦子さんも愛子さんもなかなか評判がいいですよ。
愛子  あら、どちらで……?
神谷  到るところで……。さうさう、ボオシヨア君は近頃も社
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