等は日本の現在及び将来といふことを考へて、日本の文化といふものが本当に向上するには、かういふ政治ではいけないのではないかといふ風に見る。これは或る時には日本を憂ふる精神でもあると思ふ。勿論もつと軽薄なものもありますが、しかし時には日本を憂ふる精神から出てゐる場合がある。しかもこれが日本の現在の政治といふものを否定視するところから、踏み外すのだと思ひます。ですから、私はそこのところを、日本の歴史及び日本の政治の大きな流れを形作る一つの方向として、十分希望を与へてやる方法があると思ふ。つまり日本民族といふものゝ方向に就て、彼等に十分自信を与へることは可能であると思ひます。ところが今までの教育も政治も実はさういふ手段をとつてゐなかつた。この時に偶々西洋の政治、思想に関する書物に興味をもちだして、或は左翼的な書物を読み、或は左翼運動の中に身を投じてゐる先輩の話を聴いたり、さういふ方向に既に踏み込んでゐる友人の影響を受けたりして、全く救ふべからざる状態になる。勿論これは全体とは申しませぬが、大多数の者がかういふ経路を辿るのではないかと思ひます。そこでこの思想対策、殊に学生及び青年に対する思想善導
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