は何かといへば、西洋の文明――日本はかうだ、西洋はかうではないといふ、さういふ考へ方です。しかも、さういふ考へ方を吹き込まれるのは、決して西洋崇拝、或は西洋讃美の書物からではない。もつと根本的に、日本の現代の文化――伝統文化ではない現代の日本文化、これと西洋の現代文化といふものゝ客観的な比較から、それは生れて来るのです。
 ですから、この時に私は更にもう一つ救ふ途があると思ひます。それは、政治の中に真善美といふこの三つの要素を目標とする一つの理想があるかないか、それが政治の現実の面で十分明瞭にさういふ青年たちの心に刻み込まれるやうにすることです。さういふ青年達の頭の中には、恰度この頃から初めてはつきりと文化といふ意識が刻まれる。つまり文化的であるとか、或は非文化的であるとかいふ批判力と、さういふものに対するはつきりした欲求が生れて来る。即ち現代の日本は文化的にどうなんであらうか、文化面でどうなんであらうかと考へる。それから今度は非常に真剣な懐疑乃至絶望感をもつ。これは無論非常に鋭敏な、そしてものをよく考へ込む、同時に性格的にも或る反抗的なものを蔵してゐる青年たちに特に著しい。その時に彼
前へ 次へ
全18ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング