新文化建設の方向
岸田國士
私はこの度、大政翼賛会文化部の仕事を引受けることになつたのであるが、引受けてみて、さて驚いたことは、「文化」といふ言葉がそれぞれの方面でいかに違つた意味にとられてゐるかといふことである。
従つて、お前の文化部では、いつたい何をするのかといふ質問を頻々と受ける。或る人は文化政策を樹てろと云つておどかす。或る人は教育の根本的刷新に乗り出せといふ難題をもちかける。またある人はもつといゝ映画を作れなどと冗談を云ふ。
これは少々お門違ひで、そんなことは、私の知つたことぢやないとは云へないが、しかし、さういふ責任者はちやんとほかにあるのであつて、私がまづやらなければならないことは、恐らくそれとは別のことなのである。
翼賛会自体の目的を考へても、これは明かに政府のやるべきことをやるのでもなく、また、民間の手でできることをわざわざお役所面をしてやらうといふわけでもない。いはゞ、政府がやらうとしても今のまゝの制度ではできず、国民自身やるべきことで、現在の事情ではやりにくいところを、なんとかしてこゝで、双方の力を併せ、政府にも無理をしてやつてもらひ、国民も新しい気持に
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