の機運と申しますか、さういふ方面の空気を反映してゐると思ひますが、しかし、村山氏らの提案そのものには、若干のユウトピヤン的思想が含まれてをり、少くとも私個人の人生観を以てしては、そのままにはかに賛同しがたい半面があります。が、それにも拘はらず、その提案の半面には、頗る謙虚にして現実的な精神が閃めいてゐるのであります。即ち、率直に言へば、「自分たちだけでは何もできない」といふことです。
ところが、この、「自分たちだけでは何もできない」といふ本音を、われわれは、冷淡に聴き流しておくべきでありませうか。
ここで、私は、事実に即して、私一個の考へを申し上げておかなければなりません。
実は今日お集りを願ふやう御案内を差出す範囲について、私には、三つの点に考慮を払ひました。
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一、飽くまでも、村山氏等の提案と別個の立場からであることを明瞭にし。
二、私個人の資格ではありますが、何等私心なく、不偏不党の無人称的形式を取ること。
三、成るべく少数で、成るべく広く、即ち、この方々のうち、どなたかが出ていただければこの会合の目的を達するであらうといふや
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