新劇協会の更生について
岸田國士
私が今度、菊池寛氏並に畑中蓼坡氏の勧誘によつて、新劇協会の更生運動にたづさはり、他の諸君とともに応分の力を藉さうとした動機について、一言、世間の諒解を得て置きたいと思ふ。
何れ近々のうちに、文芸春秋社から公式の発表があるだらうと思ふが、私一個の立場から、何よりも先づ明かにして置きたいことは、現在の俳優を以てする如何なる組織の劇団も、本質的な新劇運動に参与する資格はないといふ平生の主張と、一見相容れない態度を私が取つてゐるやうに思はれるかも知れないといふ点である。
今日と雖も、私は平生の主張を更へてはゐない。たゞ、これから着手する仕事が、直ちに、私の所謂「本質的な新劇運動」であると思ふのは早計である。云はゞ、将来「本質的な新劇運動」に入るべき準備行動であると思つて貰へばいゝ。
勿論、今度の仕事は、私一個の仕事ではない。寧ろ、畑中氏を始め、先輩友人諸君の驥尾に附して一部分の仕事を担任するに過ぎないのだけれども、私としては、単に、人の仕事を助けるといふ名目だけに甘んじてゐたくない腹は充分にある。
例へばこの一二年の間に、いくつかの演出を試みるかも
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