知れないが、元来演出者の仕事をそれほど「重大」であると考へてゐない私は、五日や七日の公演に於て示し得る演出者の技倆よりも、これから三年か五年後に、その五日か七日を除いた他の時日間に於て、われわれがどれだけ有効に「新しい俳優」の訓練を仕遂げ得るか、その結果を世に問ひたいと思つてゐる。
 かういふと、私が独り俳優養成の衝に当るやうに聞えるかもわからないが、そんな相談はまだ誰からも受けてゐないし、現在の私にそれだけの自信もないが、今度の計画について私の意見を述べた機会に、私は、その問題を除外して、今、われわれが「舞台の仕事」に関係することは殆ど無意味であるとさへ説いた次第である。
 関口、高田の両君も、此の点は深く考慮にいれてをられる筈である。
 上演目録についても、理想から云へば、めいめい、それぞれ抱負もあらうが、今の処、「現在の俳優を使つてやゝ無難に近いもの」といふ限られた条件がある以上、広い範囲に亘つて、優れた作品を選ぶことができない。われわれは、今、決して「われわれの望んでゐる脚本が無い」と断定はしない。寧ろ、「脚本はあつても、それを演る俳優がゐない」ことを極力叫びたいと思ふ。
 そ
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