新劇の拓く道
岸田國士

 去年の半ば頃から生れて来た所謂新劇の大同団結運動といふのは、簡単にいふならば、それぞれに少数にすぎない熟練的技術者を擁して、一つの劇団としては十分に客を惹く力に乏しいところから、寧ろ各劇団の優秀な技術者を引抜いて、それで一つの劇団を拵へて、十分職業的に自活し得るものにして行きたいといふのがその趣旨であつた。これは一応理想としては結構な考へだと受取れるが、それでは今日あるところのいろいろの劇団の特色といふものが失はれて仕舞ふことになる。それでその特色を生かして行きたいとする連中は、この大同団結の実行を危むに至つた。そしてそれから引いて、少なくとも今日ある劇団が今すぐに合同して一つの劇団を作るといふことは不可能だが、新劇関係の団体や個人達がお互に協力して、将来この新劇が、十分自活して行けるやうな地盤を作らうではないか、それには、今日までこの新劇がどういふ訳で十分に見物を惹くことができなかつたか、或はまた新劇の作家や俳優たちがどういふ訳で、各々の才能を十分に揮ひ得ないうちに、その仕事を擲つて去らなければならなかつたか、これは結局新劇が職業的に独立し得られなかつたか
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