らであるか、等々の問題を研究し合つて、早く云へば、新劇が日本の現代文化の中で十分教養ある人達の魅力になるやうな本質的な価値を発揮するやうに、いろいろな方面からその基礎を築いて行かうではないか、といふのがこの暮に成つた新劇倶楽部の趣意であつた。それでそのためには、今すぐにいろいろな新劇の団体を合同して、華々しい仕事に取りかからうといふのではないので、寧ろこの新劇倶楽部では、演劇に関する各専門家が、十分に日本の現状に即しての将来への演劇文化向上といふ問題について、研究協議を行ふことになるものと思ふのである。そのうち現在計画されてゐる事柄といふのは、先づ俳優養成所を設けて、現代劇俳優の基礎的訓練を行ふこと、研究的な演劇をやつて行くための経済組織の合理化、同時に現代の社会状勢に応じる、十分文化的意義をもつと共に、一般大衆の興味を惹き得るやうな演劇の要素を探究すること、などが考へられてゐるのである。かくて新年度からは、倶楽部のいろいろな部門が活動を始め、これが倶楽部加盟の各個人、及び団体の活動と相俟つて、この新劇倶楽部からは、恐らく広い意味での、新劇指導精神といふものが生れるであらうことを期待す
前へ 次へ
全3ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング