新劇の殻
岸田國士
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)紹介的演出[#「紹介的演出」に白丸傍点]を
−−
新劇に「型」などといふものがある筈はないのだが、事実、今日のあらゆる新劇団――素人の試演と称するものをも含めて――は、もう既に、一つの共通な「癖」をもつてゐる。その「癖」とは、「型」とまでは行かぬ「殻」のやうなもので、誰がどんなに工夫をしても、それからは脱けきれない、いはば、運命的な関節不随症なのだ。
私は、これを、俳優の演技についてのみ云ふのではない。新劇のあらゆる面、あらゆる要素を形づくる人と材料について云ふのである。例へば、新劇団体の結成に当つては、その動機並に抱負についても云へるし、上演目録の撰択、演出の方針、稽古のプラン、宣伝の範囲等、何れも、この「殻」のなかで動きがとれないものとなつてゐる。しかし、問題を局限するため私は、先づ、俳優を中心に話を進めて行かうと思ふ。
由来、新劇といふ言葉の意義について、私は幾度も疑問を提出しておいたのであるが、何よりも、新劇が少数のファン、殊に、所謂演劇青年と称
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング