「C′」は縦中横]の腕をつかみ、そこに引据ゑる)この男は、お前のなんだ。
女優C′[#「C′」は縦中横] 先生ですわ。
男優D 先生? 先生をやつつけたのか?
女優C′[#「C′」は縦中横] やつつけたわけぢやないんですけど……。
男優D やつつけとつたぢやないか。これみろ、虫の息だ。いや、もう呼吸《いき》はしとらん。何処を蹴つた?
女優C′[#「C′」は縦中横] 何処だつていゝぢやないの。うるさい。放して頂戴よ。あたし、もう帰る時間なのよ。
男優D 帰る? 何処へ帰るんだ? お前の今夜の宿は、おれが取つてやる。兎に角、一緒に来い。
女優C′[#「C′」は縦中横] あんた、偽巡査でせう。
男優D (片手を口にもつて行つて呼子を吹く真似《まね》)ついて来たらわかる。(またピリピリピリ)
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男優A、手を叩く。
[#ここで字下げ終わり]
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男優A そこらで幕にしておかう。初めてとしては、まあそんなもんだらう。何時《いつ》も云ふやうに、想像の範囲がまだ狭すぎるから、これはお互ひ、もつと伸びのびと空想を働かす
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