あら」に傍点]が丸見えだ。
女優D′[#「D′」は縦中横]  稽古不足なのね。
男優B  あの稽古ならいくらやつてもおんなじさ。
男優C  芝居をしてる本人たち、あれで面白いのかしら……。
男優D  子供は玩具《おもちや》をやらなくつても遊ぶもんだ。
女優B′[#「B′」は縦中横]  (また台詞の口調で)……「おゝ、神様、なぜあなたは、真実そのものに※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]をおつかせになるのです……」
女優C′[#「C′」は縦中横]  ……「どうぞ、そんなお話はおやめ下さいまし。それよりも、お天気のお話を、花のお話を、あなた様のお髪《ぐし》やわたくしの帽子の話をいたしませう……」
男優E  (次の部屋からはひつて来て)「さうだ、なんでもお前の好きなものの話をしよう。わしが生命《いのち》よりもいとしく思ふその清々《すが/\》しい微笑《ほゝゑみ》を消さずに、お前の唇のうへを通るものなら、それこそ、どんな話でも聴かう……」
女優D′[#「D′」は縦中横]  まづいなあ。

[#ここから5字下げ]
この時、別の入口から、男優Aがはひつて来る。一同起ち上つて会釈する。

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