] 役者になりたてはそんなもんよ。
男優B ぢや、君もおつつけ、さうなる組だ。
男優C 僕は、一昨日《をとゝひ》の晩、あれ見に行つたよ。
女優C′[#「C′」は縦中横] 十人座でせう。どこか新鮮なところがありやしない。
男優B 新鮮でも未熟な果物《くだもの》は腹をこはす。
女優C′[#「C′」は縦中横] あたしは、新劇を見ると頭痛がするの。
男優B さういふ症状もある。
女優B′[#「B′」は縦中横] (台詞の調子で)……「あたし、誰かと騒ぎたいな。新しい着物を着たせゐかも知れないわ。ねえ、なんかして遊びませうよ。あんた、村へ行かうておつしやつたわね。行きませうよ。行きたいわ、あたし……舟へ乗りませうね。草の上でお弁当をたべたり、森の中を歩いたり……。今夜は月がいゝかしら……。あら、変ね、あたしのあげた指環、はめてらつしやらないの……」
男優D 「なくしちやつた」
女優B′[#「B′」は縦中横] 「だから、あたしが拾つたの」
男優C 演《だ》し物はまあ、あれでいゝさ。たゞこつちで練習用に使つてるとも知らずに、のめのめと舞台へ掛けたもんだから、可哀さうに、あら[#「
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