いふ男が、昨日、わざわざやつて来た理由は、わしに黙つてるぢやないか。
二葉 ……。
州太 しかし、さういふことは、何れわかることだ。はつきり云つてしまはうぢやないか。実は、あのおとねが、お前たちの話を、すつかり立ち聴きしてしまつたのだ。
二葉 ……。
州太 それで、どういふんだ、あの男は……。
二葉 駅へ行く途中、さういふお話、なすつたんでせう。
州太 それも、聞くには聞いた。お前は、わしの耳に当分入れないといふ約束をしたさうだが、あの男は、すつかり喋つたよ。
二葉 そんなら、もう、いゝぢやないの。
州太 どうしてまた、以前のことを打ち明けて置かなかつたんだ。今更それを云つてもなんにもならんが……。
二葉 云はう云はうと思つてるうちに、云へなくなつちやつたの。だつて、あんなこと、云へば赦してくれるにきまつてると思つてたし、それくらゐなら、急いで云ふ必要なんかないんですもの。
州太 何処からそんなことがわかつたんだ。
二葉 調べたらわかつたつていふのよ。下宿のお神さんでせう。今度、あそこを引払ふ時でも、それや機嫌が悪いの。さういふお神さんよ。一度か、二度、遊びに来た
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