議だよ。
とね 不思議ぢやない、当り前よ。ほかのものなんかゐちや、邪魔になるさ。
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間
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新井 そのほかに、確かに証拠になるやうなものはないんですか。
とね 書置き? そんなもの、ないやうね。探してもみないけど……。
新井 探して御覧なさいよ。いよいよさうときまつたら、僕、後を追つかけてつて、どんなことをしてゞも連れて帰ります。今から、警察や青年団へさう云つてやつても間に合ふからね。
とね さうして、連れて帰つて来て、どうすんの。
新井 ……。
とね どうせ死ぬ気でゐるものと、一緒に暮して、どうなるつていふの。馬鹿々々しい。
新井 大将は、そんな気の弱い人かなあ。
とね 娘のために、気が弱くなつてるのよ。今日来た男が帰る時だつて、なんのために駅まで送つてくの? 本当なら、挨拶だつてする必要ないんだわ。それに、どうでせう、あのお愛想のいゝことは……。あゝいふところをみると、可哀さうにもなるけど……。
新井 それやどういふ話なんです。お嬢さんのお婿さんになる人でせう。
とね
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