す。
州太  事実……どんな事実だらう……。あいつに罪があることかどうか……。
とね  やつぱり、男との関係ぢやないんですか。
州太  そんなことが、どうしてわかる。
とね  だつて、さういふ事実つていふからには……。それに、ほかのことなら、あんなに二葉さんを責めるわけはないぢやありませんか。
州太  そんなに責めてるか。
とね  可愛想なくらゐですよ。
州太  よし、わしが行つてやる。
とね  およしなさい。それこそ見つともないから……。
州太  立ち聴きをするんぢやない。わしから話しをしてやるんだ。
とね  今は無駄ですよ。云ふだけのことを云はしてからの方がいゝでせう。こつちには事情もなにもわかつてないんですもの。なまじつか、あんたなんかゞ口を出すと、変にこぢれちまふわ。待つてらつしやい。もう少し、様子をみてみるから……。

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彼女は、また、奥へ姿を消す。
州太は焦ら焦らしながら、その辺を行つたり来たりする。
その時、菰原献作が、右手からはひつて来る。
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州太  なんの用だ。
献作  ちよ
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