と)それや、冷いさ。
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やがて、二人の姿が消えると、菰原献作が人夫を三人連れて、番小屋の裏から出て来る。
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献作 ぶつくさ云はずに、まあ仕事を始めろ。
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三人の人夫は、鶴嘴とシヤベルで櫓の脚のまはりを掘りはじめる。
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献作 手間は安くなつても、仕事がねえよりやましだ。その代り、一日んところを二日かけちまや、もともとだ。
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人夫三人は、調子を合せて歌ひ出す。
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歌――もう出る、もう出るで、一年暮した
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宝掘る気で、温泉掘つたりや
いくら掘つても、温泉は出らずにや
出たと思つたは、熊の小便
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献作 よからう。こんだ、そつちだ……。
歌――もう建つ、もう建つで、半年暮した
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家を建てるにや、道からつけろか
道をつけるなら、家から建てろい
人の通らん間に、独活《うど》が生えた……。
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