て感情的な日本人の心理の現れでありますが、これこそ、「勇気」とか「忍耐」とかの如き意志的な行動の根柢となり得るものでありますし、要はその持続性の問題であります。
「斃れて後已む」と言ひ、「石に噛りついても」と云ふ、あの意気と頑張りは、本来、訓練によつて十分日本的な性格となり得ることを忘れてはなりません。
困難を困難として堪へ難く思ふといふことは、決して感情の鋭さではなく、寧ろ感情の過剰であり、放恣であります。この感情に引き摺られて挫折する意志といふものは、必ずその弱さを弁護する口実を作るものです。これには一種の理知が働くわけで、しばしば、意志の敗北を理性の勝利と見做したがる風習が生じます。「諦め」の名による逃避がそれであり、「分別」の名による「ごまかし」がそれであり、「控へ目」の名による無為がまたそれであります。
「意志」の力は、それゆゑ、まづ何よりも、正しい道義観と素直な頭の働きを土台とし、更に豊かな感情の発露と相俟つて、はじめて、誤らざる方向に向つて推し進められるのでありまして、さて、その力が強大であることと、持続性をもつこととはどうしても鍛錬による自信を必要とするのです。
道
前へ
次へ
全62ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング