認識させるに役立ちました。
いづれにせよ、教育は学校のみで行はれるものではないといふ当然の事実が、国家の教育政策として漸く実践的に取りあげられ、家庭教育、社会教育を重視するについても、特に、職場教育とも云ふべき、実務を通じての心身の錬成が、結局、国民教育の仕上げであることを、一般に誰もが同意するやうになりました。非常な教育観の飛躍でありますが、実は、このことは、既に、軍隊教育に於ては試験済みであり、かつ、ナチス・ドイツの例などを引くまでもなく、嘗ての日本人は、総て、家庭と道場と職場に於て、それぞれ、躾けられ、鍛へられ、錬られたのであります。
[#7字下げ]一〇[#「一〇」は中見出し]
最後に「宗教」について一言します。
こゝで私は、自分の信仰を基礎として、宗教を語ることができないのを遺憾に思ひます。それならば寧ろ、宗教について何も言はぬがよいとも考へましたが、「戦争と文化」といふ題を掲げ、遂に一言も宗教に触れないといふことは、なんとしても片手落でありますから、たゞ、私一個の感想として、宗教が今日在るがまゝのかたちでなく、明日若しも真に人々を信仰の道に引入れることができるならば
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