、たゞぢつと顔を見合つてゐるだけで心が和むといふやうな、また、口数は少いが、何か云へばきつと味ひのあることが云へるやうな、さういふ互の修業を積むことが、日本人の「生活」をもつと「うるほひ」のあるものとするでせう。
これで「戦争と文化」といふ題下に、主として、心身の健康について、「武」の精神について、「生活のうるほひ」について説いたことになります。この何れからも、戦時に於ける国民の、特に青年の「たしなみ」の問題が引き出せますが、これは題を改めて、次の章に譲ることにしました。
[#7字下げ]九[#「九」は中見出し]
さて、「戦争と文化」について、なほ云ひ落してはならないことは、今次の戦争によつて今迄の「文化」がどういふ風に変つていくかといふ問題であります。
「米英的」な文化がわが国並びに東亜から一掃されるであらうといふことは、われわれの信念であり、また、事実それを目的として戦争が行はれてゐるとみなければならないのですが、そもそも、「米英的」文化とは何を指すかといふことになると、これは非常に単純なやうで、実は複雑な課題であります。
無暗に英語を排斥してみたり、自由主義や民主主義が米
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