たり訪ねられたり、また幾人かが一と所に集つて、ゆつくり歓談したりするといふことです。
「社交」といふ言葉は、西洋風に聞え、更に、なんとなく形式張つてゐるやうで、しつくりしませんが、要するに、人と人とが親しく交り、互に心情を吐露することによつて、人柄と思想の面白さに触れ、親愛の度を増し、気持がなんとなくほぐれるといふことは、誰しも屡々経験するところでありませう。
「非社交的」などと云はれる人々は、それはそれで思ふところあつてなのかも知れませんが、戦時生活運営の協同責任者としては、ひとつ是非、考へを変へてほしいものです。
「人嫌ひ」といふ極端な性格も昔からあるにはありますが、モリエールの描いたアルセストほど哲学的でもなく、たゞ、面倒だから、うるさいから、では話になりません。多くは、自分の我儘を棚にあげての強がりに過ぎぬと思はれます。
人と話をするといふことは、実際、相手によつてうんざりさせられることもありますが、自分の方が案外相手をうんざりさせてゐる場合もあることを反省し、知識交換などと慾張らずに、たゞ「話」をするのが面白い、楽しいといふやうな交際を、青年のうちに努めて心掛け、しまひには
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