本質を失つてはならず、それと同時に、「娯楽」を楽しむために、「勤労」を少しでも犠牲にすることは許されません。といふ意味は、「勤労」の種類にもよりますが、計画的に進められ、能率増進のために与へられた「娯楽」の時間を善用する以外に、いはゆる「生活の余暇」を個人的に利用する「娯楽」は、努めて、仕事の妨げにならぬやうな、仕事に用ひる力を消耗させぬやうな種類のものを選ばなければなりません。

 一体、「娯楽」と云へば、外に求め、外から与へられるもののやうに思つてゐるのは根本的な間違ひで、「映画」は殆ど唯一の例外と云つてよく、「演劇」をはじめ、すべてその気になれば、自分たちの手で自由に出来るものばかりです。
 素人演劇については、大政翼賛会文化部編纂の「指導書」がありますから、その精神と実際のやり方を参考にしてほしいと思ひます。

[#7字下げ]八[#「八」は中見出し]

「娯楽」についてはこれくらゐにしておきますが、「生活のうるほひ」について、もう一つ最後に附け加へたいことは、適当な言葉が見つかりませんが、「人との交り」でもよく、たゞ「語らひ」と云つてもよい、つまり、家庭の団欒をはじめ、人を訪ね
前へ 次へ
全62ページ中53ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング