、古来、「武」の道は、決して、一切の道徳と無関係なものではなく、そのうちで特に武勇なる一特性は挙げられるにせよ、なほかつ、武勇だけでは「武」の倫理は完からず、忠節以下、礼儀、信義、質素の徳目を併せ備へなければならないのであります。
[#7字下げ]五[#「五」は中見出し]
そこで、次に、この時局下に於て、いはゆる「決戦の連続」と云はれる息づまるやうな昨今の情勢に鑑み、なほかつ、私が国民全体、特に青年に求めたいのは、正しい意味における「生活のうるほひ」であります。
「生活のうるほひ」は、「武」の精神と牴触するものではなく、むしろ、「武」をして真の「武」たらしめるあらゆる倫理を含むものであります。即ち、軍人に賜りたる勅諭にもお示しになつた、礼儀と信義と質素とは、そして、特に「誠」こそは、「生活」をして「うるほひ」あらしめる根本の要素であります。
しかし、これを、一般国民の日常生活の現れ、乃至は心構へとしてみるとき、また別の角度から、その理想のすがたが考へられるのでありまして、「うるほひ」といふ言葉もまたそこから生れるのであります。
「うるほひ」は、「ひからび」の反対です。
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