といふ観念に於て、以前と全く違つた一つの観念を作りあげ、それが、彼等の神経を一部分ではありませうが、健康なものに復帰させたといふ事実であります。
正しい指導と訓練とが、青年の質をどの程度更へ得るかといふ実験が先づこれで行はれたと私は信じたいのです。
農村人の無頓着さは、なるほど、兵隊としての戦場生活に、ある種の強みは発揮するでせうが、また翻つて農村自体をみれば、その同じ無頓着さが、如何に多くの農村|疲弊《ひへい》の原因となつてゐるか、思ひ半ばに過ぎるものがあるのです。乳幼児の死亡率は、周知の如く、日本は世界一であり、殊に、農村がその大部分を占めてゐる実情であります。これは主として、農村家庭の「無頓着」が生む悲劇なのです。
こゝで、どうしても、「野性」といふことについて考へてみなければなりません。「野性」とは、自然のまゝの性質といふことですが、人間で云へば、都会的影響を身につけてゐない、いはゆる「野育ち」の、素朴で荒々しく、かつ伸び伸びとしたものをもつてゐることです。従つて、がさつ、粗野ともなりますが、一方、健康で、強靭なところがあります。
「質実剛健」といふことは、この「野性」
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