が社会的な大きな問題にぶつからなければならんと思ふから、それは絶望的で不可能だと考へるのであります。その土地の人は医者にも相談し、或る問題は当局にも進言し、また或る問題は民間の開業医達が協力し、更にまた文化部門の人達或は学校の教師とか、新聞関係の人々であるとか或は宗教家といふやうな人達の協力を得て、その地方の保健問題の解決に乗出すことが必要であるといふことを、はじめてそのお医者さんは気がつかれたのであります。
 かういふ風に単にお医者さんに限りませんが、文芸愛好者の場合も同様、また宗教家、教育家においても、今日までそれぞれその職域において、所謂「職域奉公」といふことが、狭い意味において考へられてゐる嫌ひが、なくはないと思ふのであります。しかし職域奉公を完うするためには、その職域だけの力ではいけないといふことを、吾々は反省しなければならないと思ふのであります。その意味における職域の組織といふものを只今翼賛会では考へてゐるのであります。
 即ち文化部面における職域の組織――只職域の一元的の組織といふ事を考へるのみならず、あらゆる文化部面――専門の職域を横に繋ぐ一つの機構を考へなければならな
前へ 次へ
全17ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング