らすものであります。そしてこの文化は、国民の熱烈なる意思と努力によつて、築かれなければならない、それは野蛮に対立する意味においては、文明を含むのでありますけれども、その文明は自ら神意を表象するものでなければならない。人間を駆つて機械や制度に屈服せしめるものであつてはならないのであります。
 かかる方向に打建てられた新しい文明は、国民文化の豊かな要素となり、また同時に健全なる国民文化の中からこそ、さういふ文明が新しい姿をもつて、生れ出て来るのだと思ひます。
 吾々は久しく「人類文化」といふ言葉に迷はされて参りました。恐らく人類文化といふ観念は成立つであらうと思ひますけれども、しかし吾々が建設し育成すべきものは、あくまでも「日本の文化」「日本人の文化」であつて、この形を整へて吾々は今日世界人類の前に立つたのであります。
 九州は申すまでもなく日本文化発祥の地で、三千年来その風土と歴史とを通じて、最もよく日本的性格の一面を築き上げ、磨きあげて来た土地であります。しかもその性格は、苦難に処して愈々光輝を放つ体のもので、謂はば国防の第一要件たる男性的気魄において、他を凌駕するものであるといふこと
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