戦時下に於る文化運動の意義
岸田國士
この時局下に於る文化運動の意義は、それが運動として国民的性格をもつ以上、飽くまでも物質、精神両方面に亘る「生活力の強化」を直接目指すにあると思ふ。
それが為めには、政府の施設及び大政翼賛会の方針に基き、全国各地域の文化団体は、その企画を統一し、あらゆる専門分野の連繋によつて、適切有効な実践運動を展開しなければならぬ。
「文化」は従来、政治経済の面から締め出しを喰つてゐる感があり、従つて、文化部門の専門家たちは、概ねわれ独りわが道を往くよりほかなかつたのである。しかし、広い意味に於る「文化」が政治、経済の基盤である限り、また国民生活の再建が、経済と文化の密接な表裏関係の上に考慮せらるべきである限り、文化団体の所謂「臨戦活動」なるものは、勢ひ、生産拡充、消費規整の線に沿つても進められなければならぬ。
特に国民生活の綜合的指導訓練は、主として文化職能人の高度なる新生活観に立脚して行はれる必要があると思ふ。即ち、勤労を含む全生活領域に於る能率増進、精神的肉体的の健康保持、及び品位の向上の三点を徹底的に実現させるため、あらゆる智能と技術と情熱とを傾け
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