つくすべきである。
 文化部門の職能人は、その専門領域に於て自己の研究を深め、課せられた任務を完全に果すことは勿論、現下の国家的要求に応じて、それぞれの専門を通じての文化的教養を、積極的に当面の国力充実に役立たせることは、国民としての当然の行為である。
 たゞ、こゝに最も注意すべきことは従来、文化職能人の間に知らず識らず偏狭な専門家気質を生じ、政治への無関心は事実上止むを得なかつたにせよ、協同社会を構成する他の領域との連絡調和が失はれ、その結果、学問、芸術はもとより、教育、宗教、保健衛生等の部門に於ても、それ自身一種の栄養不良状態に陥つて、その向上が阻まれてゐる傾向がないでもない。
 先づ以て、われわれは、この病的な現状を打破し、少くとも、全文化領域の協力態勢を急速に整へなければならぬ。
 確乎たる臣民道の自覚についで、ゆがめられた文化意識の払拭と、各専門部門の独善割拠の弊を改めなければ、この協力態勢は望んでも無駄である。
 全日本の文化機構の整備強化は、国家としての一元的文化政策の樹立と、民間文化団体の綜合的組織とが、両々相俟つて達成せらるべきであるが、既に展開の途上にある翼賛運動の
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